ボーカリストになる夢と、オリンピックの思い出

小学校のとき、同じクラスにOさんという小柄な女の子がいた。器械体操をやっていたその子は快活で運動神経がよく、クラスでも目立つ存在だった。正直いうと、ちょっと好意を寄せていた。

Oさんは小学校4、5年生の朝のホームルームのとき、みんなの前に立ち「本気で体操に取り組みたいので、東京に引っ越します」と言った。「夢はオリンピックに出ることです」と。突然の告白に驚き、彼女が引っ越してしまうことが寂しかったが、特別に声をかけることはなかった。

18歳になったわたしは地元ですさんだ日々を送っていた。自分が人生をつまらなくしているのに、世の中を憎み、なんでこんなにつまらないことばかりなんだと思っていた。
ある日、何気なくテレビを見ていると、オリンピックの中継が映し出されていた。そこにはアトランタオリンピック日本代表として女子団体に出場し、会場で演技をするOさんの姿があった。

「夢を叶えたんだ……」と思った。
そして同時に自分のことが恥ずかしくなった。物書きになりたいという夢は漠然としてあったが、本気で取り組んでいたわけではなかった。

その後、わたしは上京し、なんとか創作物で食べていくことができるようになった。夢を叶えたOさんがわたしを導いてくれたのだと思う。

オリンピックの思い出でした。
ボーカリストを志すあなたも、ボイトレ教材で日々、自分を磨いていくことを忘れないでいてほしいなと思います。